遺言の筆跡が本人のものとは違うということであれば、遺言作成当時の遺言者の他の筆跡を資料として筆跡鑑定業者に依頼して、鑑定書等を作成してもらうことにより、筆跡が本人のものとは違い偽造されたものであることを立証する必要があります。
『この遺言がどうしても親の意思とは思えないんです』
よくある遺言に関するご相談内容
私は一切もらえない!
父が残した「自筆証書遺言書」に「相続財産の全部を、後妻と後妻の子に譲る」と記載されていました。内容としては、父が再婚した妻とその間の子に全財産を相続させたい。前妻との子(私)には財産を渡さない、というものでした。
法定相続人のうち、兄弟姉妹以外の一定の相続人には「遺留分」と呼ばれるものがあります。その遺留分がある法定相続人は、いかなる遺言が遺されていても、原則、遺留分だけは確保できるようになっています。
今回のように相続人がその相続分に対して納得がいかないという場合、遺留分に相当する遺産を支払ってもらうことができます。遺留分とは、最低限の遺産の取り分のことであり、直系尊属の場合には、法定相続分の「3分の1」、それ以外の場合は、法定相続分の「2分の1」がそれにあたります。
相続人全員の合意がある場合は、遺言の内容と異なる遺産分割協議を行うことができます。協議によって遺言を無効にすることはできませんが、遺言と異なる内容で遺産を分割することは認められています。
また、遺言には厳格な要件が定められているため、相続人が遺言を無効にしなくても、有効な遺言と認められる要件を欠いていれば、その遺言は無効となります。
詳しくは専門家に相談されることをおすすめいたします。
母親が本心で書いているとは
思えない !
母が亡くなり、自筆の遺言がでてきました。しかし遺言書を書いた当時、母は高齢で、認知症の診断は受けていなかったものの、判断能力はなかったと思われます。母の死後、何ヶ月か経ち、父から自筆証書遺言があるといってコピーを渡されました。当時持病で入院してた父が、母の遺言を確認できたはずはありません。
遺言を行うためには、遺言能力と言って、遺言の意味を理解し、自分でその結果を弁識できる意思能力が必要です。認知症であっても、自ら遺言の内容を理解し、そこから通じる結果を認識できていれば、その遺言は有効と言えます。一方、本人の意思能力が失われるほど認知症が進行していれば、当然、遺言の意味すら分かっていないはずですから、遺言能力はなかったとみなされ、その遺言は無効となります。実際に、過去の裁判の中でも、公正証書遺言(公証役場で公証人に作成してもらったもの)でも、認知症の進行度合によって無効と判断された例があります。
認知症に限らず、病気で寝たきりになっていて、発語や日常生活に必要なことが、ほとんど何もできなくなっていた状態であれば、不動産や預貯金等、自己の財産について詳細に仕分けた遺言を行う能力はなかったとみなされます。
当事務所では遺言能力を調べることも行っておりますので、詳しくはご相談ください。
遺言書は明らかに、
父親の文字では無い!
亡父の遺言書を確認したところ、明らかに父の筆跡ではありませんでした。父の自筆証書遺言の検認を申し立てた、遠方に住む兄を疑っています。どうすれば良いのでしょうか。
裁判所に対して遺言無効確認訴訟を提起することで、遺言無効を認めてもらうことができます。今回のような場合ですと、筆跡鑑定を求めるとともに、手紙やメモ、日記など筆跡が分かるものを資料として提出し、その遺言がお父様ご本人によって書かれたものではないということを異同判定していきます。
しかし、遺言者が略字の使用や書き方を変えていたりと、使用文字を変動させている場合があったり、加齢とともに筆の流れや筆圧、行間や字配りが変わることもあるため、筆跡鑑定のみでは、その証明力に限界があると言われています。
そのため、裁判では遺言書作成の経過に加え、遺言者と相続人らとの利害関係やそれまでの関係性の他、遺言作成時における心身の状況、その後の遺言者の行動までを総合的に考慮して判断します。
今回のように、遺言が偽造された疑いがある場合は、その偽造についても立証する必要があります。
ひたちなか東海本部、日立事務所にてご相談を受け付けております。
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029-229-1677 平日9:00~20:00
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遺言無効主張の流れ
遺言無効を立証するには、資料の収集を行い、遺言者の状態と意思能力を把握する必要があります。収集した資料をもとに、遺言無効の主張をすべきか否か、裁判で勝訴する見込みを弁護士が分析・判断します。
当事務所では、関係する資料の収集、遺言の有効・無効の可能性の判断を事前調査として受任しております。
弁護士は、事前調査の結果を踏まえて、遺言無効を主張できるか否かをご依頼者にお伝えします。
自分の主張が認められた!
遺言が無効になった場合
遺産分割協議を
行いましょう
遺言が無効になった場合、あらためて遺産の分割方法を決める必要があります。
遺言無効確認訴訟で争った後に相続人同士で遺産の分け方について協議を成立させるのは困難と思われますので、速やかに遺産分割調停を申し立てて解決を目指すのが良いでしょう。
自分の主張が認められなかった…
遺言が有効になった場合
遺留分侵害額請求
を行いましょう
遺言が有効と判断されてしまった場合は、遺留分侵害額請求を行うことになります。
ここで注意すべき点は、遺留分侵害額請求権は1年間の消滅時効にかかってしまう点です。その1年間を過ぎてしまうと遺留分侵害額請求権は認められませんので、遺言無効確認請求訴訟を提起するとともに、仮に遺言が有効とされた場合に備えて、予備的に、遺留分侵害額請求権を行使しておく必要があります。
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遺言の内容や作成状況に納得できないと思ったら
まずは、遺言内容の事前調査を
行いましょう
遺言の有効性を調査するサービスを行なっています。
遺言の有効性に疑問を感じておられる方は是非ご利用ください。
遺言が作成された場合でも、遺言作成時の遺言者に遺言能力(意思能力)があったか否かが問題となることがあります。
もっとも、認知症であるからといって直ちに無効となるわけではなく、認知症の程度がどの程度重いか、遺言の内容が単純なものか否かなどの諸事情が総合的に考慮され、遺言能力の有無が判断されることになります。
②カルテ等の取寄せ及び協力医に対する意見照会
介護記録、医療記録(カルテ)、介護保険認定調査票などの記録の開示を依頼し、場合によっては協力医に意見をいただきます。
取得した資料を元に
遺言無効の主張をするか否かの検討※当該遺言が無効か否かについては、最終的には訴訟において裁判官が判断することになりますので、当然ですが、遺言無効を主張したとしても認められない場合があることはあらかじめご了承下さい。
遺言の無効を主張するには、多くの証拠を集める必要があります。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を全て取得し、法定相続人全員の戸籍を集めるという大変な準備が必要です。遠隔地ですとさらに時間も費用もかかり、住所を調べるだけでも一苦労です。
この点、弁護士は、職務上の権限があるため、効率良く戸籍謄本等を収集することができます。
また、その他の証拠資料(筆跡鑑定業者の鑑定書やカルテ等の診療記録、介護認定調査票等の資料等)の収集も依頼することができます。
(自筆証書遺言の場合)
遺言書検認の申立てのご依頼もお受けしています。法定相続人を調査する手続は司法書士さんでもやっていただけますが、家庭裁判所における検認手続に代理人として参加することができるのは弁護士だけです。
また、「検認」後に遺言書の法的有効性を争う場合、裁判のための書面作成や裁判手続の対応等を含めて的確なアドバイスをしてくれるのは弁護士しかいません。
万が一、遺言が有効と判断された場合に備えて、
遺留分侵害額請求も併せて主張できる
遺言無効確認請求訴訟を提起する場合、訴訟のみならず、その後の遺産分割や遺留分侵害額請求が必要となります。また、遺留分侵害額請求権の時効や相続税申告の期限もありますので、できる限り、弁護士と相談しつつ、慎重に方針を決定することをお勧めします。
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遺言の事前調査を弁護士が
進めます!
遺言無効を主張する案件は、相続分野の中でも難易度が高い案件です。そのため、弁護士の経験や実力によって結果が左右されてしまいます。遺言の無効を争う場合は、相続問題に詳しい弁護士に相談・依頼しましょう。
当事務所では、遺言無効に関する案件を多数解決できました。以下に、その一部を掲載しています。
事案概要
亡き母の2通遺言書(自筆証書遺言、公正証書遺言)が出てきました。公正証書遺言は後に作られたもので、原則的に公正証書遺言は有効となります。
ただ、ご相談者様は他の相続人と遺言書の効力について争いがあるため、公正証書遺言の通りに相続したいとご依頼いただきました。
弁護士の対応
介護の記録などを取り寄せたうえで、当事務所で判断能力があったことを整理し、提出したことで、
判断能力のあるなしを主張するだけでなく、 自筆証書遺言と公正証書遺言の内容を比較検討することによって 公正証書遺言は合理的に作成されたものだと主張しました。
結果
その結果、裁判所としても、こちらの主張を前提とした和解案を提案し、結果的に勝訴に近い形で和解へ至りました。
事案概要
ご相談者様は、被相続人と養子縁組を行い、被相続人の養子になりました。被相続人の死後、遺産分割の話をした際に、突然、他の相続人から、被相続人は認知症だったから養子縁組は無効であると主張され、当事務所に相談にいらっしゃいました。
弁護士の対応
ご依頼者様は養子縁組・遺言作成時の録画を持っています。
判断能力について、専門機関にテストを実施し、判断能力があると判断が出てきました。相手方は判断能力がないと証明できる診断書を提出しました。
当事務所は、裁判所へビデオを提出し、「養子縁組と遺言作成時点に判断能力あること」の確認を求めました。
結果
その結果、こちらの主張が認められました。
当時の動画、カルテなどの資料を可能なかぎり集めて、証拠として提出して、遺言作成ときには被相続人に遺言作成の能力はあったとの立証に努めたことが功を奏しました。
事案概要
ご相談者様は弟に遺言無効の裁判を起こされました。 ご相談者様は、ご自身の名義である実家に住み続けたいのですが、土地の名義人である弟に「住み続けたかったら地代を支払え。それができなければ、家屋を売却するように。」と言われて、当事務所に相談にいらっしゃいました。
弁護士の対応
本来であれば、遺言の効力に争いがありますが、ご相談者様は実家に住み続けるか、ご本人様の意思に反して退去することになります。
当事務所は、遺言の無効の主張を続けながら、建物を弟に買い取らせる方向で進めました。単純に遺言が有効か無効かだけの法的な主張にとどまることなく、ご相談者様が最も望ましいのは何なのかを考え、本来マイナスだったものをプラスにすることができました。
結果
最終的に和解に至って、建物を弟に買い取ってもらうことができ、ご相談者様は新しい生活を始めました。
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弁護士費用
遺言有効性の調査
20万円(税込22万円)
※介護記録、医療記録など資料の取り寄せ請求について、請求先1箇所について17,600円(税込、実費別)の手数料が発生します。
※取り寄せた資料をもとに協力業者に協力医を紹介してもらい、医師の鑑定書や意見書を作成してもらいます(別途費用が必要)。
※調査に続いて相手方との交渉又は訴訟手続をご依頼になる場合、別途、交渉又は訴訟手続の着手金等を頂戴いたします。
よくあるご質問
遺言無効を主張するには、
どんな証拠が必要ですか?
以下の2つのうち、どちらかに該当する場合は、遺言を無効にできます。
① 他者による偽造など、本人の意思に基づいていない遺言
② 意思能力がないと判断された状態での遺言
遺言の無効について、裁判所に提起する際に必要となる証拠についてご説明します。
自筆証書遺言の場合、裁判所で検認の手続をしているはずなので、他の相続人からコピーを受け取れない場合であっても、裁判所から遺言書のコピーを取り寄せることができます。
また、遺言作成時の状況を確認するため、病院に対して看護記録やカルテの開示を求めます。この看護記録には、ご本人の言動等が具体的に詳しく記載されていることが多いので、重要な証拠が見つかることもあります。これらを証拠とし、自筆証書遺言の要件を満たしているかどうかを確認します。
また、遺言書を取り寄せしたら、まず第一に自筆証書の形式的な要件を確認してください。具体的には、作成日および遺言者の氏名が記載されているか、遺言者本人がその遺言書の全文を書いているか、そして押印はあるか、等の要件を満たしている必要があります。
遺言で遺言執行者に指定されて
いましたが、遺言無効を主張する
場合どうしたらいいですか?
遺言の有効無効を判断する権限を有しているのが遺言執行者です。そのため、遺言が有効かどうかを調査し、有効であると判断した場合には、その遺言の内容を具現化しなくてはいけません。
相続人によって遺言の無効が主張された場合、それを無効とする事由とは何か、その事由が存在するのか、それを裏付ける証拠はあるのか等、相続人らに聞き取りしたり、証拠となる資料を提出してもらう必要があります。こうして資料を集め、遺言が有効であると判断されれば、遺言内容を実現しなくてはなりません。しかし、無効と判断された場合には、遺言執行はするべきではありません。
なお、遺言執行者は、遺言により指定されるため、もしその遺言が無効と判断されれば、遺言執行者には何の権限もないことになります。そのため、遺言者執行者自身には、遺言の有効性を判断をする権限だけでなく、義務もあると言えます。
公正証書遺言の有効性を争うこと
はできますか?
公正証書遺言は、法律の専門家によって作成されるため、遺言の中でも比較的適法で確実なものとされていますが、以下のような場合は、無効にすることができます。
1 遺言能力がなかった場合
2 公正証書遺言の要件を満たしていない場合
・口授を欠いている
・不適格な証人だった など
3 真意と内容に錯誤があった場合
・脅迫や詐欺によって無理矢理書かされた など
4 公序良俗に違反している場合
遺言書作成にあたり意思能力は
どう判断される?
遺言を書くためには意思能力が必要になります。
意思能力がない状態で書かれた遺言は無効とされます。この意思能力とは、自分の意思表示によって、どのような権利変動が生ずるのかを理解できる能力のことをいい、具体的な年齢で示すと7歳から10歳程度の判断能力とされています。なお、民法上では、満15歳以上から遺言することが可能です。
認知症であっても、遺言者が遺言内容とその効果などを理解できていると総合的に判断された場合には、その遺言については意思能力があると認められる場合もあります。具体的には、認知症の程度や理解力を判断し、遺言作成の動機や経緯を聞くとともに、遺言によって生ずる結果や遺言の条項が難しいものではない場合、認められます。また、成年被後見人については、事理弁識能力を一時的に回復した場合において、医師2人以上の立会いのもと遺言を行うことができます。この際、医師は、遺言者が遺言をする時に事理弁識能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記し、署名と捺印をします。
一方、認知症が進行し、意思能力がない状態と判断された場合は遺言作成はできません。また、意思能力がない人に無理やり書かせた遺言や、意思能力があっても遺言者の意思によらない内容を無理やり書かせられた遺言は無効となります。このような場合、遺言を無理やり書かせた相続人や受遺者は相続欠格となり、被相続人の遺産をもらう権利を喪失します。
遺言書の作成には、法定要件が備わっていることはもちろん、遺言者自身の自由意思にもとづいて、自己の財産を誰に取得させるのかを決めている必要があります。自由意思でない状態で作成された遺言については、無効となるのが私法の大原則です。
公証役場において公正証書遺言を作成する場合には、公証人が遺言者本人と面談をおこない、遺言者の意思能力を確認しています。
遺言の有効性を争う場合でも、
遺留分請求はしないといけない
のでしょうか?
遺言が有効となれば、遺言書に従って遺産を分配することになります。遺言により自身の相続分が侵害される場合は、遺留分などを検討することになるため、遺言無効を主張する場合でも、念のため、遺留分侵害額請求は行っておくべきです。
一方、遺言の無効確認訴訟の結果、遺言が無効と判断されれば、その遺言は法的に存在しなかったものとみなされるため、通常の遺産分割となります。
アクセス
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