【専門家が解説】二次相続の落とし穴とは?配偶者特例の盲点と賢い対策

相続対策と聞くと、「配偶者に全財産を渡せば、相続税はかからないから大丈夫」とお考えの方は少なくありません。確かに、配偶者には1億6000万円まで相続税がかからない「配偶者の税額軽減(配偶者特例)」という強力な制度があります。

しかし、この考え方だけで一次相続(例:夫が亡くなり妻へ相続)を終えてしまうと、その次の「二次相続」(例:妻が亡くなり子へ相続)で、ご家族が大きな負担を強いられる可能性があります。

この記事では、専門家の視点から「二次相続」に潜む落とし穴と、家族の財産を最大限に守るための賢い対策について解説します。

「配偶者特例」の思わぬ落とし穴

 

「配偶者特例」は、配偶者が相続する財産のうち、法定相続分または1億6000万円のいずれか多い金額までは相続税がかからないという制度です。これは、夫婦が長年かけて共に築いた財産を守るための合理的な制度と言えます。

例えば、夫が1億6000万円の財産を残して亡くなった場合、妻がその全てを相続すれば、一次相続における相続税はゼロになります。

しかし、これが常に最善の策とは限りません。特に、相続財産が1億6000万円を超えるようなケースで、安易に全財産を配偶者に相続させてしまうと、次の二次相続でご家族が不利になることが非常に多いのです。一次相続と二次相続を合わせたトータルの税負担で考えると、結果的に損をしてしまうケースも少なくありません。

 

なぜ二次相続まで見据えた計画が重要なのか

 

二次相続まで考慮すべき最大の理由は、子供への相続には、配偶者特例のような大幅な優遇措置が存在しないためです。

一次相続で配偶者が多くの財産を受け取ると、その配偶者が亡くなった際の二次相続では、その多額の財産がそのまま子供たちへの課税対象となります。相続人の数に応じて基礎控除額は増えますが、配偶者特例に比べるとその効果は限定的です。

また、二次相続における最適な財産配分は、残された配偶者がその後どれくらいの期間お元気で過ごされるかによっても大きく変わります。5年後、10年後、20年後…と、将来を見据えたシミュレーションが不可欠となるのです。

 

計画を狂わせる「長生き」と「認知症」のリスク

 

長期的な計画を立てる上で、大きな不確定要素となるのが「認知症」のリスクです。

一次相続で財産を受け取った配偶者が、もし重度の認知症と診断されてしまうと、判断能力が不十分とみなされ、その後の有効な相続対策が非常に困難になります。例えば、「財産の一部を子供や孫に生前贈与しておこう」と考えていても、認知症が進行するとその法律行為自体ができなくなってしまうのです。

ご両親が認知症になってから慌てて相続対策を考え始めるケースは後を絶ちません。だからこそ、ご家族が元気なうちから専門家に相談し、将来のリスクに備えることが極めて重要になります。

 

具体的な対策:生前贈与の賢い活用法

 

では、具体的にどのような対策が有効なのでしょうか。

まず、一次相続の段階で「配偶者に全財産」ではなく、財産の一部を子供たちにも相続させるという方法が、トータルの税負担を軽減する上で有効な場合があります。

さらに、二次相続対策として非常に効果的なのが「生前贈与」の活用です。生前贈与を検討する際、多くの方が「子供へ贈与するもの」と考えがちですが、もっと広い視野で対象者を考えることがポイントです。

例えば、お子さんが2人いて、それぞれ結婚し、さらにその夫婦に子供(お孫さん)が2人ずついるご家庭を考えてみましょう。この場合、生前贈与の対象者となり得るのは、

  • お子さん本人(2人)
  • お子さんの配偶者(2人)
  • お孫さん(4人)

となり、合計で最大8人もの贈与対象者がいる可能性があります。年間110万円の暦年贈与の非課税枠や、相続時精算課税制度などを組み合わせ、計画的に財産を移転していくことで、将来の相続税負担を大きく軽減できる可能性があります。

 

相続対策はいつ、誰に相談すべきか

 

この複雑な相続計画は、いつ、誰に相談するのが最適なのでしょうか。

  • 相続が発生したタイミングの場合
    一次相続の相続税申告を依頼した税理士に、二次相続まで見据えた最適な遺産分割のアドバイスを求めることが重要です。
  • ご両親がお二人ともご健在の場合
    最も効果的な対策が打てるのが、相続発生前、つまりご両親がご健在なうちです。この段階であれば、二次相続まで含めたシミュレーションを行い、生前贈与などを組み合わせた、より柔軟で効果的な事前対策を計画することが可能です。

 

まとめ:大切なのは「家族全体の資産設計」

 

相続対策は、目の前の一次相続だけを考えるのではなく、その先の二次相続まで見据えた「家族全体の資産設計」として捉えることが何よりも重要です。

「配偶者特例があるから安心」と油断していると、将来ご家族が思わぬ税負担に悩まされたり、ご両親の健康状態によって対策が手遅れになったりするリスクがあります。

当事務所では、お客様一人ひとりのご家族構成や財産状況、そして将来への想いを丁寧にお伺いし、一次相続と二次相続の双方にとって最適な相続計画をご提案いたします。ご両親がお元気なうちから、家族みんなの未来のために、大切な財産をどのように繋いでいくかを一緒に考えてみませんか。

相続に関するお悩みやご相談は、ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせください。

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