親から相続した「売れない不動産」でお困りではありませんか?専門家が解説する対処法と最善策
「親が残してくれた土地や家が売れない」「管理費用ばかりかかって困っている」— 親から相続した不動産について、このようなお悩みを抱える方が増えています。当事務所でも、以前は「親の遺産だから」と引き継がれるケースが多かった「不要な不動産」に関するご相談が、近年非常に多く寄せられるようになりました。
この度、当事務所のYouTubeチャンネルで公開した動画「親からの不動産相続で困ってる必見。売れない土地の対処法と最善策を専門家が解決!」の内容を基に、手にしてしまった不要な不動産にどう対処すべきか、いくつかの方法とそれぞれの注意点について詳しく解説します。祖父母名義のままの不動産など、複雑なケースについても触れておりますので、ぜひご一読ください。
1. 相続放棄:最もシンプルながら影響の大きい選択肢
「どうしてもその不動産はいらない」という場合に、最も簡単な方法が相続放棄です。
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手続きと注意点
- 家庭裁判所に「相続財産はいらない」という申述書を提出します。
- 亡くなったことを知ってから3ヶ月以内に手続きを取る必要があります。
- その不動産だけでなく、預貯金などのプラスの財産も含め、全ての相続財産を受け取れなくなりますので注意が必要です。
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メリット
- 不要な不動産の所有責任から免れられるため、手続きが完結します。
- 親が抱えていた借金などの負の遺産からも逃れることができます。
- 毎年かかる固定資産税の負担もなくなります。
- 相続人が複数いる場合でも、自分一人だけが相続放棄することが可能です。
2. 自治体への寄付:現実的にはハードルが高い方法
次に考えられるのが、市役所などの自治体に不動産を寄付する方法です。
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現状と条件
- 制度としては存在するものの、現実的には非常に難しい選択肢です。
- 自治体が寄付を受け入れるのは、道路など公的に必要性が高いと判断されるケースが中心です。
- 建物が建っておらず、境界が明確であるなど、自治体が管理する上でマイナスにならないような物件でなければ受け付けられる可能性は低いと言えます。
3. 不動産業者への引き取り:一見マイナスな不動産も価値を見出すケース
「値段がつかないから売れない」と思われがちですが、実際にはマイナスに見える不動産を買い取ってくれる業者も存在します。
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買い取りの可能性がある不動産の例
- 山林: 木材としての価値や、砂利採取の目的で買い取られることがあります。
- 土地: 造成後に太陽光発電の敷地として活用されるケースもあります。
- 建物建築が難しい土地: 建築資材の置き場など、別の用途で活用されることもあります。
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費用と探索方法
- 非常に安い値段、場合によっては0円で買い取ってもらえることもあります。毎年固定資産税を払い続けることを考えれば、0円でも引き取ってもらうメリットは大きいでしょう。
- 信頼できる業者を見つけるためには、専門家に相談して紹介してもらうのが最も確実です。ご自身で探す場合は、複数の業者に当たることをお勧めします。
4. 国庫帰属制度:2023年4月開始の新制度
2023年4月頃から開始された**国に土地を渡す「国庫帰属制度」**は、特定の要件を満たせば国が土地を引き取ってくれる画期的な制度です。
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要件
- 土地に限定されており、建物がある場合は解体が必要です。
- 土地を他人に貸している場合や、隣地との境界争いがある場合は利用できません。
- 一方、崖地などで通常は引き取ってもらえないような、価値のない土地でも危険性が低ければ引き取ってもらえる可能性があります。
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メリット
- 毎年発生する固定資産税の負担を回避できます。
- 将来、お子さんやお孫さんの代まで不要な不動産を残さずに済みます。国としても、管理されていない土地を国が一括で管理できるという点で望ましいとされています。
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費用と手続きのしやすさ
- 制度利用には、国による調査費用として数十万円、場合によってはそれ以上の費用がかかることがあります。これがデメリットではありますが、将来的な負担を考えれば十分なメリットがあります。
- 国庫帰属制度は、行政手続きの中でも比較的利用しやすいのが特徴です。国の担当者が不足している部分や指摘事項について親身になって教えてくれるため、単に要件を満たさないからダメ、ではなく、どうすれば要件を満たせるかを一緒に考えてくれます。
- 専門家に依頼しても良いですし、ご自身で手続きを進めることも可能です。
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期間
- 申請から完了までは、資料確認や現地調査などがあるため、半年以上かかることが多いです。しかし、「次の代に不動産を残したくない」という強い思いがある方には、ぜひ検討していただきたい制度です。
5. 物納:相続税納税が困難な場合の特殊な選択肢
あまり使われるケースは少ないですが、相続税の申告が必要な方の場合に、**「物納」**という制度があります。これは、相続税を金銭で納税することが困難な場合に、相続税評価額で国が土地を買い取ってくれる制度です。ただし、要件が非常に厳しく規定されているため、基本的には「国庫帰属制度」の利用が現実的と言えるでしょう。
複雑なケース:祖父母名義のままの不動産と共有持分の放棄
親が亡くなった際、実はその不動産が祖父母の名義のままになっているケースも珍しくありません。
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問題の複雑化
- 祖父母名義のままの場合、亡くなった親の子供たちだけでなく、親の兄弟姉妹も全員が話し合いに参加する必要が出てきます。
- 相続放棄以外の多くの手続き(国庫帰属制度など)は、相続人全員で合意形成して手続きを進める必要があります。
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話し合いが困難な場合のウルトラC:「共有持分の放棄」
- 相続人全員での話し合いが難しい場合、共有者の一人が自分の持分を放棄し、他の共有者に強制的に引き取らせるという方法も考えられます。
- メリット:話し合いを行うことなく、自身の持分を放棄できるという簡潔さがあります。
- デメリット:持分を放棄しても、相手がすぐに登記を移転してくれるとは限りません。その場合、登記移転を求める裁判を起こす必要があるなど、相手の協力が必要になる場合があります。
- 重要なポイント:この「持分放棄」は、相手の同意が不要です。不動産に価値があることを前提とした制度のため、「放棄する」という意思表示を正式に行えば成立するとされています。
最も良いのは相続人全員で話し合うことですが、それがどうしてもできない場合には、この「共有持分の放棄」も選択肢の一つとなります。
まとめ:専門家にご相談ください
親から相続した「売れない不動産」への対処法は多岐にわたり、それぞれにメリット・デメリット、そして複雑な要件が存在します。特に2023年4月に導入された「国庫帰属制度」は、今後の活用が期待される新たな選択肢です。
ご自身の状況や、不動産の種類、ご家族の状況に合わせて、最適な対処法は異なります。不要な不動産を次の世代に引き継がせないためにも、早めに専門家へご相談いただくことが重要です。
当事務所では、お客様一人ひとりの状況を丁寧にヒアリングし、最適な不動産処分や相続対策のプランをご提案させていただきます。お気軽にお問い合わせください。
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